8cmのピンヒール

月を見て綺麗だねと言ったけど あなたしか見えてなかった

8cmのピンヒールで駆ける恋

消せないメールの行方 冷めにくい熱だった

太陽が迎えに来ても 覚めにくい夜だった

化石になった脳みそが 私のからだを支配して

寝返りを打つたびに 右左にコロコロ

8cmのピンヒールで駆ける恋

8cmのピンヒール / チャットモンチー

 

チャットモンチーが解散を発表した。“完結”だという。

すきなバンドだったけど、なんだかすっと受け入れられた。

あーそうなんだって。それぐらいのこと。

それから、なぜか8cmのピンヒールのことを思い出した。

 

8cmのピンヒールは、チャットの中でも5本の指に入るぐらいすきな曲。

すきなひとのために無理してがんばる女の子が意地らしくて、せつなくて大好き。

 

 

歩幅を合わせて歩いた 転ぶとわかっていたけど

痛みも忘れてしまうの あなたは優しいから

 

ねぇ私のこと全部わかるって言ったけど

あなた何も見えてなかった

この涙はね あなたの全てを盗むため

真っ白いハンカチにつけた染み

 

 

私は、この2番の歌詞が好きで好きでたまらない。

 

好きな人のために、無理して履いた少し高い8cmのピンヒール。

痛いのを我慢して、歩幅を合わせて歩いた。

「全部わかるよ」って言われたけど、この涙も本当はウソ泣き。

 

女の子ならきっとだれでも共感できる。

 

妥協からは、何も生まれない。

わたしのことを好いてくれるから、わたしもこの人を好きになりたいとか

この人を好きになれたら幸せなんだろうなあとか

そういう感情を抱いたことがない人はいないと思う。

 

でも、それじゃだめだ。

 

無理してすきになっても、すきになろうとしても

すきと依存をはき違えるだけで

いつのまにか本当の気持ちも、自分自身も見失ってしまう。

何もわからなくなる。

 

それがいちばんこわい。

 

好きな人がいた方が毎日が楽しいからなんて、自分勝手で恋に恋してるだけ。

あの頃だって、生ぬるいミルクティーみたいな、そんな時間が淡々と続いていた。

 

それでも、高校生だった時のことを思い出すように、たまにあの人のことも思い出すかもしれない。

そこに恋とか愛とか悲しみとか、そういう言葉はなくて、ただアルバムを開くように無機質に思い出す。

 

妥協すれば、男は別フォルダに入れて、女は上書き保存なんていう、薄っぺらい言葉に妙に納得してしまうような、そんな恋が生まれるだけだ。

 

最後には、冷蔵庫に入れて終わり。

冷たいのかな、けどそんなもん。

 

到底無理なひとだってわかってても

それでもすきだって胸を張って言えるような

諦めずに追いかけられるような

そんな女の子は本当に素敵だ。

 

8cmのピンヒールで駆ける恋

まっすぐで一生懸命な女の子のうた。

 

恋人に全部ぜんぶ合わせてしまって

でもすきだから我慢して

時には優しさに心踊らされて

好かれるためならなんだってした

上手くいかなくなるのはわかってたけど

それぐらい好きだった

あなたは私のこと何もわかってなかった

最後まで一方通行の恋だった

でも、それでもすきだった

 

結局、女の子は振り回される運命なのかもしれない。

ばかみたいに追いかけて、勝手に傷つく。

 

財布を預けられると、信頼されたような気になってしまったり

コートを渡した時に手が当たって、少しドキッとしたり

そんな安っぽくて幸せな記憶に包まれて、女の子は生きている。

 

白馬の王子様は迎えに来てくれないことなんて、とうの昔にわかっているけど、そんなことはどうでもいいのだ。

 

好きな人のことを、ただ、好きでいたい。

8cmのピンヒールは、そんな女の子の気持ちを本当に上手く代弁した曲だと思う。

 

解散してしまっても、曲は残る。

私はこれからも、最寄り駅から家まで歩く時、月を眺めながらこの曲を聴くだろう。

 

チャットモンチー、おつかれさまでした。

ありがとう。